雪割草
　竹中はシロー達に気が付くと、゛来たか゛というような鋭い眼光に変え、

「あれ？皆さん、どうしました？」

　とぼけた口調で言った。

　すぐに全員で竹中に詰め寄り、取り囲むようにして睨みつけた。

「お前俺達を騙したな！あの場所には、アパートなんて無かったぞ」

　チュンサンが怒りを露わにして言った。

「騙すなんて、とんでもない。私は建設予定だと言ったんです。決して完成したとは言ってませんけど……。
その地図の場所に、近々公団住宅を建設予定だという事ですよ。
でもそれは、渋谷区役所との折り合いが着けばの話ですけど……。」

　平然とした顔つきで、竹中は語った。

「ふざけるな！お前一カ月後って言ったじゃねえか」

　更に、チュンサンが追い詰めようとした。

「だから、一カ月後に完成予定だったんです。
あの時は……。

でも、私にも分からないんですよ。建物がいつ完成するかどうかっていうのは……。
建物の工事は、また違う部署が担当しておりまして……。

私の仕事は、皆さんの誘導だけなんですよ。
苦情は区役所に行って、工事を担当している部署に言って下さいよ」

　眼鏡の縁がキラリと光った。

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