雪割草
 美枝子は横たわりながら、微かに痙攣していた。

熱を帯びた体からは、汗が湧き出ていた。

気を失いかける寸前だった。

「おい、誰か!救急車だ。救急車を呼べ!」

 その声が公園中に木霊した。

 慌ててニシヤンが、竹中の胸ぐらを左手で掴み、

「おい、お前!携帯電話持ってんだろ!出せ!」

 右手で竹中の上着を弄り、内ポケットにそれらしき物を見つけたが、ニシヤンにはそれを掴み出すことが出来なかった……。

「もういい、ニシヤンやめろ!俺が直接病院に連れて行く!」

 シローは急いで美枝子を背負おうとした。

力の抜けた体がシローの腕の中にもたれかかった。

集中力を高め、一気に抱えようとした時……。

捲れたシャツの襟元から、美枝子の首筋に紫色のアザを見つけた。

「美枝子!どうしたんだ?この傷は!」

「う……。う……。」

 美枝子は、うなされているだけだった。

不信に思い、腕を捲ってみた。

アザだらけだった。

足も……。背中も……。

体中が誰かに殴られたように黒ずんでいた。

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