雪割草
 ニシヤンとチュンサンは、河川敷の枯れ枝を集め火を着け始めた。

燃え上がる炎は、やがて二人の身長を超えてゆき、その煙りは向こう岸まで届きそうな勢いだった。

 シローは美枝子との別れを惜しみ、リヤカーの荷台に横たわる、冷たい頬を撫でていた。

゛美枝子、ごめんな……。

俺と出逢わなければ、お前はーーまだ生きていたかもしれない……。

もっと、普通に生きて……。

年寄りになるまで生きて……。

最後は……。

きちんと葬式も出して貰って……。

お前の一番良い写真を飾って貰って……。

たくさんの人達に別れを告げられて……。

俺と出逢ったばっかりに……。


俺と出逢ったばっかりに……。゛

 体の隅々までも、血管を伝い厭世感が循環してゆく。

シローは遂に涙を流してしまった。

 ニシヤンとチュンサンは、燃え盛る炎を背にして、そんな二人を見守っていた。

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