裏切りの少年
39. 森下
森下という男が俺の目の前に来た。


「君も『ヘブン』の軍人か。
確か、『W』殲滅部隊の………」


俺は頷いた。
正直、何を言っているのかがわからない。


「少し前にね………
君の仲間を一人捕まえたんだ。
そこで彼に君達の事を色々と聞かせてもらったよ。
『W』総長の暗殺。
そして、タツロウ君を狙う理由を………
だが、君達のことは『ヘブン』の軍人としか話さない。
なかなか、優秀な軍人がこの国にはいるようだね」


多分、掴まった『G』隠密部隊の奴が適当な解答をしたのだろう。
確かに、話の流れから考えれば、『ヘブン』の軍人が『W』を攻撃する話には納得が出来る。


「そいつはどうなった」


俺は森下に聞いた。


「処分させてもらった………
言っておくけど、私は殺していないからね。
そこだけ勘違いしないでくれよ」


俺はこの場をどう逃げるかを考えていた。
森下と標的はある程度の油断をしている。
俺の脚もだいぶ回復した。
後はタイミングだけだ。


「君も『W』は世界の敵だと………
そう思っているの」


森下が俺に聞いた。


「ああ」


俺は素直に答えた。


「そうだね。
確かに君の答えは正しいだろう。
『W』がいなければ、こんな戦いもなかったし、人が死ぬこともなかった」

「それがわかっていて………」

「この世界は少し『おかしい』んだ。
私はそれを正したい」

「意味がわからないな」

「8年前………
私が中学2年次に母が病気を患ってね。
『能力病』って聞いたことがあるかな。
私は助けたかった。
だが、当時の私には何の力もなかった。
私の母がね、死ぬ寸前で、私に言ったんだ。
『政治家:五十嵐シロウ』を支え、自分のように亡くなる人々を救ってほしいと………
私は誓った。
今はまだ、幼いけれど、いずれば………
だが、母が亡くなり、すぐに五十嵐さんは殺された。
私の『誓い』とはなんだったんだろう………
そう感じるようになった」


俺は森下の話を聞きながら、五十嵐の事を思い出していた。
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