裏切りの少年
「井上博士は『クローン技術』に詳しい。
『魂のない身体』は用意できる。
適合させた身体を作り、『選択の石』を入れ、『人間の遺伝子』を入れることで、生命は誕生したが、彼の求めた『超越者』にはならなかった。
『選択の石』は身体に適合したことで(+)の粒子を作るようになった。
つまり、体内の『選択の石』から出る(―)が瞬時に(+)へ変換される。
無限に(+)を体内で精製されるため、能力値100にはなるはずなんだが、能力値85しかならない。
なぜなのか。
それは『第二種粒子永久機関』が問題だからだ」

「第二種……粒子………」

「『第二種粒子永久機関』だ。
粒子をすべて変換することはできない。
つまり、100%粒子を変換できないと考えられる。
まぁ、ケンイチ君が『超越者』のお守役をしていてね。
一度『超越者』の失敗作を見たことがあるけど、変換されずに外部に粒子が流出していた」


俺は神山博士の話を聞きながら、『バケモノ退治』を思い浮かべた。
やはり、神山博士は『W』側の人間らしい………


「だから、無理なんだよ。当時の技術では、人間の身体で能力値100以上なんてさ。
それに、井上博士が書いた『能力学会研究報告書第四百五十七号』の論文『想定内の能力値を超える超越者と可能性』には、『空間理論値である能力値を超えることで時空間を歪ませることができる』と記されていた。
意味がわからない。
そもそも、『時空間の歪み』ってなんだろう。
タイムマシーンか。
だが、それだと量子力学が生じる。
でも、物質で時空を超えることは不可能だと考えられる。
なぜなら、『Ifの世界』など僕の理論に反するからだ。
だが、しかし………」

「………先生」


俺は意味がわからなくなり、神山博士を止めた。


「ああ。すまない。
つまり、私が言いたいのは『進化』・『脳信号』・『血』が人間の持つ能力に深く関わっていることになる。
特に『血』だ。
(―)の粒子を『血』を通して(+)に変換させ、その(+)粒子を回収して、(+)と(―)の粒子を制御できれば、『物』にも『才能』が宿る」
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