裏切りの少年
53. 存在
―――夜
神山博士は不機嫌そうな表情を浮かべながら、『ドライブシステム』を操作していた。
俺は神山博士の横に付いて、『超越者』研究が行われるのを待った。


「神山博士。
『超越者』はどれぐらいで完成しますか」


俺は神山博士に尋ねた。


「うん」


神山博士は返事を返すだけで答えようとしない。



「先生。
そろそろ、帰らせていただけます」

「その方がいい。夜も遅いし」


神山博士は笑みを浮かべた。
俺は仕方なく、帰ることにした。


「一週間後、また伺わせて頂きます」


俺は研究室を出る前に、神山博士にお辞儀した。


「宜しくお願いします」

「うん。任せといて」


俺が顔を上げると、神山博士はやる気なさそうに手を振った。
『任せてくれ』と言いたいのか、『早く帰れ』と言いたいのか、この時は分からなかった。




―――4日後
俺は喫茶店で相棒を待っていた。コーヒーを飲みながら、今後の事を考えた。
『超越者』が誕生するのは決定事項となった。
金本から頼まれた『超越者』『勇者』『W』がこの世界に揃うのも時間の問題だ。

だが、揃ったところでどうなる。
『超越者』が誕生して、俺は制御できるのか。
『勇者』が現れたとして、俺は見つけることができるのか。
『W』が今までのように活動して、世界に認められる日は来るのか。
そして、俺には何が出来るのか。


「ウルフ。久しぶりだな」


俺が声のした方を見ると、相棒がいた。


「ああ」


俺は書類を片付けた。
相棒は向かい合うように座った。


「お客様。ご注文は」


店員が注文を伺いに来た。


「コーヒーだ」

「かしこまりました」


店員は厨房へ戻った。


「それで話したいことってなんだ」


俺は金本と神山博士のことを話した。
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