バレンタイン事件簿
そこにあったのは見た目だけは美味しそうなトリュフチョコが5粒ほど入っていた。

予想外にまともな物が出て来たからなのかな、

拍子抜けしてしまった柚太と郁人はそのまま1粒を口の中に放り込んだ。

数秒後、甘いとはかけ離れた味が彼らの口の中に一気に広がった。

彼らが1度も味わった事のないような謎の味である。

一体何処をどうすればそのような味になるのか。

2人は佐和に聞きたい気分であったが、怖くて聞けなかった。

無理矢理飲み込むと、2人は気分を悪くしてその場にへたり込んだ。

あまりのおいしさに動けないほどに感動したと勘違いした佐和は、

違う意味で責任感を感じたからなのか2人を寮までその足で送って行った。


そして冒頭に至る。

2月14日、古瀬柚太と渡会郁人にとって最大のトラウマとなってしまった1日であった。

佐和をそそのかした里緒を恨みながらも、2人の意識は遠くへ飛んで行った。
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