桜りっぷ
慌てて、叔母の元へと向かう
茉優の足元。

今日、おろしたばかりの
新しいパンプスは
少しサイズが大きくて
足がパカパカと抜けて
歩きづらい。

この靴、失敗したなぁ・・・

足元を見つめながら歩く
茉優は、何かにぶつかる。

「キャッ」

ぶつかったのは、黒いスーツ
を身に纏った男性の背中。

「ごめんなさい」

「いやっ」

男性は、その場に立ち止まり
俯き、首に巻かれたネクタイ
に触れていた。

私は、男性の脇を通り
二・三歩、歩いたところで
後ろから声が聞こえた。

「うわ、わかんねぇ」

振り返ると、男性は
ネクタイを首から外し
手に握り締めていた。
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