クルイウタ
プロローグ
ここは海沿いの小さな街。
美衣は今日も、学校から家までの道のりを一人のんびりと景色を見ながら歩いていた。


「遠まわりして帰ろっかな」


親友、あやから借りた漫画も読み終えてしまったし、たった一人の家族である母も帰りが遅い。
早く帰らなくてはいけない理由はどこにもなかった。


砂浜へと続く階段を降り、適当な場所へカバンを置いて美衣は無造作に座り込んだ。
遠くからは笑い声。
少し気の早いサーファー達が、波遊びを楽しんでいた。


「あたしもバイト、しよっかなぁ」


親友、あやは今年に入ってからバイトを始め、毎日一緒に帰宅していた美衣とは別々の時間を過ごすようになっていた。


美衣が寂しいヒトリゴトを言ったその時――


< 1 / 21 >

この作品をシェア

pagetop