たった一つの流れ星
数日が過ぎた。佑二は窓からボンヤリ外を見ていた。宇宙を走っているのは本当の様で、細かい星の光が無数に輝いている。最初はキレイに感じたが、ずっと同じ様に流れる景色に飽きてもいた。
「はぁ…」
溜め息で窓が白く曇る。
「憂鬱なようだな…」
不意に背後から声がした。振り返ると見知らぬ老人が立っている。
「ああ、急に話し掛けてすまん。退屈でな。年寄りの話し相手になってくれんか?」
老人は向かいのイスを指差しながら聞いてきた。
「はぁ…どうぞ」
老人にイスを勧める。退屈していたのは佑二も同じだ。話し相手がいれば気分も紛れる。今日は楓君も来そうになかった。
「まだ若いのに勿体無いなぁ…」
老人は目を細め佑二を見た。
「ワシがこんなに生きてしまって申し訳ないくらいだ」
「いえいえ、そんなことは…」
「ああ、すまん。ワシは太田という」
「僕は水澤です」
「水澤くんか…。」
老人は生前、優雅な暮らしをしていたのだろうか。品のある顔と貫禄を感じる姿だった。
「君はいつもここから誰のことを見ているんだ?」
「え?」
急な質問で佑二は聞き返した。
「あ、いや、話したくなければいいぞ」
「いえ、そんなことは。婚約者です」
「婚約者か…。」
老人は目を細め、俯いた。
「結婚前だったのか…。それは…。」
老人は言葉を濁した。
「太田さんは?」
佑二は老人に切ない顔をされるのがたまらずに聞いた。
「ワシは妻を見てるよ」
「奥様を?」
「ああ、もう年寄りだがな」
そういうと太田さんは遠くを見る目になった。
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