新撰組の姫君 〜もしもの世界・斎藤一編〜

稽古=死屍累々

本日の手合わせは防具有り、竹刀で、らしい。

「構え。」

土方さんの声で一君と総君が向きあう。

「始め!」

合図と共に道場内には緊張感が漂う。

睨み合ったまま、足元以外が動かない2人。

立ち方だけで漂ってくる2人の強さ。

自分が稽古をつけてきた子供たちはもちろん、兄や、道を歩いている自称武士達とは全てが違う。

見ているだけで、ワクワクする。

あの人達と手合わせがしてみたい。

敵わなくてもいい。実力の差なんて分かりきっている。

ただ、自分の全てを受けて、相手の全てを感じたい。

怪我さえなければ…おそらく自分は2人の間に乱入していただろう。

「一本。面有り。勝者、斎藤。」

総君の隙をついて一君が面を入れる。

防具をつけた戦いではわりかし小手を狙い勝ちになるのもだ。

逆に胴は狙いにくい上に面や小手に比べて速さが劣る。

一君はわざと胴を開けて見せ、胴を狙って無褒美となった面を打ったのだ。

『一本』の基準はなかなか深いのにあっさりと取ってしまったのはすごい。

凄い。凄い。凄い。

一戦交えてみたい。

「次、原田と平助」

先程までの二人に比べると迫力などは劣るものの、やはり凄い。


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