500枚280円A4コピー用紙と百均の油性ペン極太
不満の言葉でありながら楽しそうに言う少女の前で、首を刎ねられた鬼の体が、仰向けに倒れていく。

彼岸花より醜悪に、鬼の首から朱が溢れ咲く。

鈍い音を立てて胴が倒れたとき、刎ね飛ばされていた鬼の首と手首が、落ちてきた。

ぼろりと、岩のような拳が顔面から剥げる。

「なあ峰月」

「はい」

「……」

「……そうですね。梅干食べたとき、あんな顔になる人なんて、実際はあまりいないですよね」

「だろう」

あとの処理は、花組がやってくれる。女の死体を片付けるのも、鬼の屍骸を片付けるのも、ぶちまけられたおでんを掃除するのも。

俺達の仕事は、鬼を見つけて、駆除するだけだ。以上でも以下でもない。そこに、情熱や正義はない。

血の水溜りが出来上がるのを見ていても、腹は満足しない。きびすを返す。

「行くぞ峰月」

「はーい。……あ、組長」

「なんだ」

「たとえ情熱も正義もなくても、そこでチラッと空を見上げてアンニュイな表情を見せてくれたら私、ファンタジーな気分に浸れるかも」

「そういうキザな演出は、風組のヤツに言え」
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