500枚280円A4コピー用紙と百均の油性ペン極太
肩上程度の長さで切られた栗色の癖毛に、つぶらな瞳。黙っていればかわいい顔をしているというのに、人の心を逐一口に出すことと、少々マゾ気質な部分がたまにキズだ。いったい、どうすればこんな少女が出来上がるのか。

「組長――」

「なんだ。今度はセクハラとでも言うのか」

「違います。組長、私達は〝仕事中〟なんですよ? ――敵、発見しました」

「……ご苦労」

コイツ、次ふざけたら、突き落とす。

「すみません」

「よろしい」

思うだけで伝わるとは、こういうときには楽である。

ジャケットのポケットから、一枚の紙切れを取り出す。

そこには、俺以外のだれも読めようのない、象形文字が描き込まれている。それが持つ意味はひとえに、『斬』という概念。

呪符――。阿呆が見たなら、そう思うかもしれない。だが、この紙は五〇〇枚組二八〇円のコピー用紙を切ったものであり、使った筆記具は百均の油性ペン極太である。五分で作った。

「……組長、お願いですから私に、もう少しファンタジーなロマンに浸るチャンスをください」

「悪いな。俺は実質主義者だ。ファンタジーに浸りたければ、勝手に心を読むな」

「読んでるんじゃなくて聞こえるに近いんですってば!」などと反論してくる峰月に、もう一枚取り出した紙切れを手渡す。俺のと同じものだ。

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