Water World Wars ~軍人と少女の恋物語 【序】
 185cmあるジュリアンの背をも隠すほどに高く作られた、バラの垣根。

 中庭にあるバラ園は、ジュリアンが命じて作らせたもの。

 入口のアーチをくぐり、大きな円形になっているバラ園は、中心までまっすぐ伸びる小径と、そこから枝分かれするように円形に沿って伸びる弧を描いた小径の2種類に分かれ、ゆるりと咲き誇るバラをじっくりと堪能できるように造られている。

 おろん、ろろん――……

 バラ園に足を踏み入れると、澄んだ音色が一段と大きくなった。

 まっすぐ伸びる小径を進み、その先のバラ園の中央に佇む東屋に向かう。

 いくつかの円柱の上に円形の丸みを帯びたドーム型の屋根を乗せ、中には休息できるように石造りのベンチが東屋にあわせて弧を描くように造りつけられていた。

 だがしかし、その音はどうやら東屋ではない様子。

 東屋の前――バラに囲まれたバラ園の中央に敷かれた芝生の上。

 ほろ――ほろろ……おろん……

 片膝を立てて東屋の柱に背を預け、芝生の上に腰を下ろして心地よさそうに目を閉じて音色に耳を傾けている青年の姿。

 そして。

 青年の斜め向かいに腰を落ち着け、その手の中から清らかな音色を奏でている小柄な少女の姿。

 少女の手には、まろみを帯びた美しい壷の断面のような形のリラがあり、その弦に指を滑らせて紡がれる音色が正体だった。
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