【短編】『おもいで文集』

―旅立ち

私はアツシとの糸を切った。


そしてあの出来事を共にしてくれた蓮と歩き出すことにした。

原宿で分かれて、家路を急いだ。
途中に朝行ったリサイクルショップに寄って領収書を見せてアツシとの思い出をお金に換えてもらった。

1人で帰宅し部屋の電気をつけて、閉めていたカーテンを開いた。

朝の光景がまだ蘇るけど、私はなんも思わなくなっている。

きっと光景を忘れるのは時間の問題な気がするんだ。

これからこの傷を癒して、忘れさせてくれるのは蓮しかいないんだ。



これから空白だった数年を埋めていく、共に…



そして
―おもいで文集
とかかれた卒業文集を机に置く。



文集を届けてくれてありがとう。
そして私を見つけてくれてありがとう。

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