五里霧中




「やぁ、助けに来たよ」


少し高めの青年のような声に釣られて、振り返る。


そこにはあの男が立っていた。


「君のお兄さんもそこで寝てる。危ないことをしようとしてたから眠らせたんだ」


「……アイツを殺したのは、どっち?」


震える声で尋ねる。


喉に意識を集中しないと、声が出せない程に怯えていた。



「どっち、って。この部屋には三人の容疑者がいるのに……君は『どっち?』と尋ねるのか」


「……屁理屈はいいから、早く答えて」


咎めるように急かすと、彼はやれやれと頭を振って指をさした。




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