五里霧中
肩で息をするリンを前に、僕は何故だか妙に冷静になっていくのを感じた。
これで楽になれる。
これで自由になれる。
もう僕はにぃにじゃない。
優しい『お兄さん』でもない。
黒と白との狭間に立ち尽くす灰色のヒーローでいなくてすむ。
これでやっと本来の色を取り戻せたんだ。
たくさん嘘をついて、周りを騙して、白になりきっていた。
だけどやっぱりニセモノはホンモノにはなりきれなくて。
だからずっと灰色のまんまだった。