五里霧中



家の中は今日も愚鈍な平和が広がっている。


アルファはAだし、双子は屋根裏だし、クロは縁側だし、リンは昼寝。


どこにも狂気は転がっていない。


退屈で平凡で、ゆったりとした時間が流れていく。



僕は緩みきった空気を深く吸い込んで、肺の底に溜まった淀みを目一杯吐き出した。


時計の針は11時を指している。


そろそろEが食事の用意を始めるだろう。


それまでクロと縁側で読書でもしようか。


凝り固まった体を大きく反らし、欠伸で零れた涙をごしごしと拭う。



まだ大丈夫。


僕はまだ、大人にならないから。


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