月夜に舞う桜華



口端がひきつる。


「お前こそ椿の何だよ」


背中の方で智詩が朔夜に問いかける。
刹那、グイッと後ろに引っ張られ、あたしの体は傾いた。


気づけば、あたしは朔夜の腕の中にいた。

「おい!!」


叫ぶ司に、朔夜はあたしの頬に自分の頬をくっつけた。


「俺達は、こーゆー仲」

「「はあぁぁぁ!!??」」


思わず手で耳詮をして、四人の声を小さくする。ビリビリと空気が震えてる。


「………うるさ……」

「てめぇ!うちの椿に何したんだよ!!」

「…………ナニ?」

「!!殺す!!」


ギャーギャー喚いている四人を見て、あたしは首だけを動かして朔夜を盗み見る。
表情は変わっていないが、とても楽しそうに見える。


(………はぁ、)


楽しくていいわね、とため息をつきながらあたしは、言い争いをBGMに靴箱に向かう。


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