月夜に舞う桜華



あたしは強い。
弱くない。


(大丈夫。彼は信じてもいいよ)


彼?
彼って一体誰?


(安心して、全てを委ねて……もう、ゆっくり休んでいいんだよ――桜姫)


声が遠くなっていく。
それに比例するように視界も狭まってきた。


完全に視界が遮断させる寸前、あたしは温かな光が差すのが見えた。












目を覚ますと、見知らぬ天井が広がっていた。


(ここ……どこ……?)


キョロキョロ見渡せば、広い部屋。装飾を見る限りでは男の部屋と思われる。殆ど黒に統一されている部屋は、不思議とあたしに安心を与えてくれる。


しかし、一体ここはどこなのだろう。
ゆっくりと上半身を起こすと、身体中に痛みが走る。
痛みに、彰真と喧嘩していたことを思い出した。


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