月夜に舞う桜華



高笑いをする男に、ガラガラと何かが崩れていくような音が聞こえた。


「だから、俺はもう仲間じゃない」


男は、ズボンのポケットからナイフを取り出す。


「死んでくれない?桜姫(オウキ)」


ナイフの切っ先が向けられる。
男の目には揺るがない殺意。


――――そうか、


(信じても裏切られるのか)


心の中で嘲笑した。
ガラガラと全部が崩れていった。


「………好きにしろ」


両手を広げ、何もしない。
男はニヤリと笑うと、地面を蹴る。






月が綺麗な夜。


桜が舞うなか


一人の少女が、死んだ。





全てを捨てて、絶望に染まりながら、静かに死んでいった。


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