月夜に舞う桜華



何気なしにそちらを見て、久しぶりの顔に何故か胸が熱くなった。


「つ…ばき……?」


恐る恐るといった体で、ゆっくりと近づいてくる。
よく見ると、目の下に隈がくっきりとある。


「さ……く、」


カラカラに喉が乾いている。
自分でも驚く位に声がかすれている。


「つばき……椿…っ」


あたしの傍らまで来た朔夜は、ゆっくりとあたしの頬に手を伸ばす。
あたしの頬に触れる朔夜の手は温かい。


「さく、や」

「やっと、目醒ましたな……」


朔夜の頭が肩口に埋まる。
スンッと鼻を吸う音に、朔夜泣いてるのかなとぼんやりと思う。


「あたし、どのくらい……?」

「1ヶ月だ」


サッと顔をあげて朔夜はあたしの頭を平手で叩く。


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