月夜に舞う桜華



素直に頷くことは出来ない。
あいつも、同じようなことを言って、結局は裏切ったのだ。


「………口では何とでも言える」

「桜姫、」

「桜姫は死んだと言ったろ……あたしは、五十嵐椿だ」


そう吐き捨てて、あたしは彼らの間をすり抜けてその場から立ち去った。





(…………ごめん)


心の中で謝罪の言葉を述べる。
彼らの言葉は嬉しかった。それを真っ直ぐ信じられないあたしを許してほしい。


あたしは、怖い。彼らを信じてまたあいつのように裏切っていくのが。


だから、あたしは逃げる。





ごめん。



今のあたしにはその言葉しか彼らに向けられる言葉はなかった。



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