月夜に舞う桜華



そんな話に乗るわけがない。


「形だけはいらない」


俺は、お前の心も欲しい、と朔夜は言う。


「………心が貴方を求めるとは限らない」

「そうだな……でも、分からないだろ」


人間、先は分からない。
動かなきゃ、何も始まらない。


傍にいることで、相手をお互い知っていくなかで芽生える想いもある。


「………」

「…………俺は、あいつとは違う」

「………!」

「絶対に裏切ったりはしない」

「なんで知って……」


ハッと晶の姿が浮かんだ。
あたしが皇蘭総長だったことも調べられたのなら、どうしてやめたのか経緯も恐らく調べられていたのだろう。


あたしは、嘲笑した。


「―――口では何とでも言える」


思い出す。皇蘭を、司達を、和を。
皆、同じようなことを言って、和はあたしを裏切ったのだ。


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