【短編】貴方の背中
ダメだ!
これ以上、頼っちゃダメだ。


私の問題なんだから。


考えが及ぶと同時に、背広と鞄を持って玄関に走る。
ドアを開けると、話し声が聞こえてきた。


「悪いな、今日は帰れそうにない」


悲壮な面持ちで、携帯に話し掛ける朝日奈部長。
その横に立ち、背広と鞄を差し出す。


「えっ?」


反射的に受け取る朝日奈部長は、驚いた顔で私を見た。
手を顔の横で広げ、精一杯の笑顔で“バイバイ”と手を振った。


部屋に入り、チェーンを掛ける。
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