幕末怪異聞録


「池田屋にいたのか?」


その瞬間、桂からビリビリと殺気が飛んできた。


時雨はそれでも表情を変えなかった。


「いたぞ?誰だったかな?
確か、吉田稔磨って言ったかな…?」


「―――あなたが吉田を殺したの……ですか?」


その声は、怒りにも似た悲しみだった。


「殺した。それが私の仕事だからな。」


「あんたは退治屋と言って人殺しをしているんですか?」


桂は些か興奮していたが、それを抑えようと平常心をよそった。

そんな桂を見て、時雨は桂が“勘違い”をしていることに気がついた。


「あんた勘違いしてるかもしれんが、吉田は鬼に取り付かれていたんだぞ?
私はそれを退治したんだ。」


「……は?」


頭がついて行かないのか、桂は「意味が分からない。」と言わんばかりの困惑した表情を見せていた。




< 191 / 321 >

この作品をシェア

pagetop