幕末怪異聞録


———————…………



時雨は通りに出ると、藤堂がいた茶屋に目を向けた。


だが、伊藤と話している間にいなくなっていた。


(やはりいないか……。)


何故かその時、胸がざわつく感覚に陥った。


もう、藤堂に会えないような、そんな感覚に……。


(まさか…な……。)


「——はぁ……。」


考え過ぎか。と頭をかき、買い物を再開した。




**




その夜———


「時雨?」


「ん?何だ?」


時雨と沖田は鍋をつつきながら、のんびりしていた。


「そんな髪紐つけてたっけ?」


(あいつ、長州の人間だし、言わない方がいいよな……?)


「あー……。買ったんだ。」


「——そうなんだ。」


ふっと微笑む沖田の顔を見た時雨は、嘘がばれたんじゃないかとドキッとした。



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