ベンニ
第5章

第1節

彼が新しく配属されたその町は人口1万人程度の小さな町で、彼には平和そのものに思えた。



「絶対に戻るつもりだから、デスクはきれいなままにしておくつもりだ。物を置くんじゃないぞ。」



バウアーは相棒となった女性刑事のミュラーにそう言った。




ミュラーは小柄で一見刑事には見えない容貌をしている。きれいな黒髪を一つにまとめ、さながら人の良い高校生のようだった。タレ目なので、どんなに怒っていたとしても、そうは見えなかった。
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