花日記

すべて、か。



それがどういう物なのか、俺は分かりようもない。



綾子はそれがどういう物なのか知っているのだろう。



けれど、そんなことを考えたこともなく、すべて神仏によると昔から教えられてきた俺は、いきなりそんなことを言われても理解出来ない。



「邪魔をした。」



俺は逃げるように部屋から出る。



「え?
ちょ、ちょっと!?」



綾子は慌てて着いてきたが、俺は気にもとめない。



冷たいかもしれないが、俺はそれどころではなかった。



「公方様!?」



廊下には当然のように奉公人が仕事をしていて、俺を目にして慌てて頭を下げる。



「酒を。」



適当な奴に命じて自室の奥に寝転ぶ。



気が付くと酒が用意されていて、また浴びるように飲む。



酒に溺れたいのに全然酔えなくて、何故かイライラする。



「…はあ。」



思わずため息が出て、飲みかけの酒をそのままに色街に出かけた。


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