花日記

「姫に、似てただろ?」



「なっ…!」



こいつ、まさかわざと!?



あの企んでるような感じは、これだったってことか!



「お前、わざとか?」



俺が睨みながら聞いたら、嬉しいだろ?、とへらへらした口調で答えた。



「いやー、三日前に街に出たら、公方様がおん自ら連れてきたっていうゴ側室サマにそっくりな女がいたもんだから、驚いたよ。
それに、話を聞いたら白拍子だって言うからさ、面白いと思って奉行に頼んで無理矢理宴に呼んだんだ。」



「余計なお世話だ。」



「そうか?
俺としては作戦大成功!って感じなんだけど。」



「もういい。
もう仕度は終わっただろ、下がれ。」



「冷たいねぇ。
はいはい、それでは失礼しますわ。」



「…早く行ってくれ。」



「あ、ひとつだけ真面目な忠告な。
白拍子に溺れて姫を悲しませないように!」



「…それのどこか真面目な忠告だ。」



「いや、かなり真面目だと思うが。
それじゃー、本当に失礼致します。」



散々軽口を叩いた後、成兼は急に真面目なな顔に切り替わって退出していった。



この切り替えの早さは、見事だと思う。



俺の前では、兄や友のようにへらへらとしていても、いざ公に出ると忠実で優秀な家臣だ。



俺には、無くてはならない片腕。



優秀な、俺の側近。



照れ臭くて、本人にちゃんと伝えることは出来ないが。


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