籠のなかの花嫁
「夜はご馳走作りますから、楽しみに待ってて下さいね」



美羽がそう言うと、あっ思ったときには、目の前に晴太の端整な顔があった。



唇の柔らかい感触とともに。



恋人になってから一つだけ大きく変化したこと。



それは、寝る前のキスだ。



いつも不意討ちで、美羽はその度、心臓の早鐘に苦しむ。



晴太の優しい触れるだけのキスに美羽は未だに慣れない。



だが、好きな人との細やかな触れ合いに幸せを感じている。




小さなリップ音とともに唇が離れると、晴太はその腕の中に美羽を抱き寄せる。



「何の日かは分からないが、美羽が楽しいなら俺はそれでいい。・・・愛してる」



そう言われて再度腰に巻き付く腕に力を込められると、美羽は安堵からなのか、それとも何か別の感情からなのか、体に力が入らなくなり晴太に寄り掛かってしまう。



あたしは愛されてる。

この人に求められてる。

あたしも晴太さんを愛してる。



「私も晴太さんを愛してます」




体の関係はないにしろ、不器用な二人ながら、心は十分すぎるほど繋がっていた。




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