籠のなかの花嫁
だが、そんな美羽を見ても一向に晴れない晴太の表情。



美羽は気付かぬフリをして、立ち上がり部屋へ向かおうとした。




「今はまだ待ってる」




───────?




「お前が、本心から笑ってくれるのを俺はずっと待ってる」




そんな日なんて来るはずがない。



喉まで出かかった言葉を飲み込み美羽は自室へ入った。



改めてお財布を見る。



確か・・・これは梨奈が好きだと言っていたブランドだったはず。


女子高生に人気があるブランドだ。


わざわざ調べて買ったんだろうか?


あたしが喜ぶとでも思いながら?


美羽はお財布を袋に戻した。



本心からの笑顔。



あたしを縛る人間なんかに見せると思う?


気を遣うことに窮屈で、ずっと真顔でいようかとも思った。


楽だとも言ったし。




でも、楽だからってそのままでいたら、全部相手の思う壺。



あの男(ひと)に飲み込まれる。





美羽は袋をギュッと握り締めた。









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