運命の初恋愛
#28 【奇跡】
「(あなたは……ハナさん?)」


開きかけていた扉に、体をぶつけちゃって――。

中に大きな音が響いた。


結果、ステージの上にいたジナさんが、私に気づいた。


ポロン……ポロン――…


相変わらず、ジュヨンさんはピアノを引き続けている。



「(ハナさん!)」

ジナさんが、こっちに駆け寄ってきた。


「ご……ごめんなさい。もう会わないと約束したのに……」

私がそう謝ると。


「(もういいのッ。私が悪かったわ。想い合う2人を引き裂くような真似をして――ごめんなさい)」


いつもは日本語で話すジナさんが、韓国語で必死に謝り返してきて。


「……あ…………」

私は全てを悟った。



ジュヨンさんがどうして、ピアノの演奏をやめないのか――。



「(ジュヨン、もう何時間もピアノを引き続けているの。私じゃダメなの。あなたが、やめさせて……お願い――)」


ジナさんはそう言って、会場を出た。


「…………」

私は、一歩一歩、ステージに向かう。


< 190 / 213 >

この作品をシェア

pagetop