黒い飴玉

「玲!」


朦朧としてきた意識を戻すために私を呼ぶ彼の声が聞こえた。

はっとして横を見てみると、そこには黒いスーツに身を包んだ長身の彼。

モデルのような端正な顔立ちをしているが、ここずっと走り回っているために、いつものような余裕は感じられなかった。

彼の普段ならサラサラしている黒髪が汗のせいか肌に少しへばりついていて、彼も私同様必死なのだとあらわしているようだった。


「大丈夫」


それでも私と目が合うと顔を歪ませながらも優しく微笑んで私を励ました。
それが彼の優しさと感じ少し気分が落ち着くが、大丈夫なんて言葉は今日で何回聞いたのだろう。


“ハァハァ”


疲れたなんて感情はもう通り越していた。

ドクドクとせわしなく脈打つ心臓も限界を超えてこのままだと爆発しそうだった。
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