涙飴
気にする事はない。
そう思ってはいても、やっぱり気になる。


「あのさぁ……」


あたしが口を開くと、華耶は足を進めながらそれに答えた。


「何?」


「華耶はさ、あたしの事……応援するって言ったよね?」


この言い方は少し刺があったかもしれない、と口に出してから思ったけれど、言ってしまったものはしょうがない、と華耶の返事を待った。


「え!?
もしかしたら……姫月あたしが大地君の事好きって疑ってる?」


華耶はあたしが言い出せずにいる事をサラリと言ってのけた。


「まぁ…その……」


その通りだけど、『うん』と答えるのはさすがに気が引けたので、曖昧な返事をした。
華耶の歩く速さが、心なしか少し速くなっている気がする。

動揺……しているのだろうか。

その瞬間、華耶があたしの手を離してくるりと振り向いた。
少し茶色がかった髪が、フワリと揺れる。


「そんなわけないじゃん!
姫月が好きなの知ってるのに、そんなこと出来ないよ!」

「そっか。
ごめんね?」


「ううん。あたしは姫月を応援してるからね!」


華耶はそう言ってくれたのに、まだ心の何処かには厚い雲がかかっていた。
華耶を信じたい。
けれど、やっぱり華耶の行動には疑問が残る。



華耶の言う『応援』とは、一体何なのだろう。
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