涙飴
「暇だけど……」


あたしは言ってから少し後悔した。
暇って言われたのは嬉しいけど、何も計画せずに聞いていたから、その内容を全く考えていなかった。


「日曜日に何かあるの?」


どうしよう…どうしよう……

『あの映画まじ良かったよ~!』
近くにいた女の子達の会話が微かに耳に入る。


「映画!観に行かない?
その……スターウィーズのチケット持ってて…大地あの映画好きじゃん?だから、良かったら行かない?……って思って……」


チケットがあると言うのは本当だった。
確かこの前、お父さんが新聞の契約をした時に貰ったって言っていた。



もう大地観ちゃってるかな?
あたしとは行きたくないかな?


「……まじ?
俺まだ観てなかったんだよね!
本当にいいの?」


いいの?って……


「当たり前じゃん!
あたしから誘ったんだし」


顔が自然と笑顔になる。
こんなにも嬉しいと思ったのは、久しぶりかもしれない。


「じゃあ何時に行く?」


大地とこんな話出来るなんて、カップルがデートの予定立ててるみたい、とあたしは幸せに浸る。


「チケット十一時からのだけど……」


「じゃあ十時半頃お前んちに迎えに行くから!」


「うん!じゃあ日曜日!」


「おう!ありがとなー」
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