涙飴

彼氏

家に帰ると、携帯のライトが点滅している事に気付いて携帯を開いた。
ディスプレイには“新着メール１件”と表示されていた。


『今日は先に帰っちゃってごめんな。
しかもいきなりあんな事になって、びっくりしたよな。
姫月居なくなっちゃったから聞けなかったけど、大事な話って何だったの？』



そのメールの内容は、あたしの沈んだ気持ちを更に奥深くまで沈めた。
自分が思っていた以上に、あたしの想いは伝わっていなかった。



返信しようと親指を動かしてみたけれど、その手を止めた。

画面が滲んで見えない。


大地のメールを返さなかったのは、きっとこれが初めてだ。
今までは、メールが来るだけで嬉しくて、どんな些細なメールでも気付いたら直ぐに返信していた。


今思うと虚しさだけが募る。






ポタリ、ポタリと落ちる涙を、あたしは何度も何度も拭った。
涙と共に、大地を想う気持ちも零れ落ちてしまえばいいのに、と願いながら。
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