小さな勇者

思い返せば
小学2年生の時の運動会。


あたしの知らない子の手を引いて歩く友香に聞いた。


『どうしたの?』


『里沙のお母さんを探してるから、お母さんはそこにいてね』


それだけ言うと
友香はその子のお母さんを探しに人混みに消えた。


小さな2人は
運動会 終了後の父兄たちの波に揉まれながら


あたしの前を
何度も往復したっけ。


ようやく1人で戻ってきた友香に訳を聞くと


『里沙、転校生でね。里沙のお母さん、知らなくて先に帰ったみたい』


低学年は運動会が終わったら
保護者と一緒に帰宅するはずだった。


でも里沙は最近 引っ越してきたばかりで、彼女のお母さんは知らずに先に帰宅したらしい。


『先生に言ったら、先生が家まで送るってさ。だから友香たちも帰ろ♪』


無邪気に笑う友香は
どこか誇らしげだった。


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