天空のエトランゼ〜蜃気楼の彼氏〜
灯りは、うっすらとついていた。

それでも、足元が見にくい。

それなのに、軽快に下りていく夕美。

足音が、階段にこだました。

「あのお〜ゾンビはどこに?」

地下二階くらいは、下りた。

すると、右側に通路が広がっていた。

薄暗い為に、奥までは見えないが、階段から5メートル先に、カフェの看板が見えた。

夕美は、その奥を指差した。

「百メートル程いくと、左右に広がる通路に繋がる。そこに、たくさんいるはずよ」

「え!すぐ近くじゃないですか」

僕は、戦闘体勢に入ろうとした。

「大丈夫よ。ここ来るゾンビは、あまりいないから」

夕美は、階段を下りた左側の壁に手を当てた。

行き止まりのはずが、壁が回転した。

「隠し扉?」

僕が驚いている間に、夕美の姿が消えた。

「こんなところに!?」

慌てて、僕も壁に手を当てた。

壁の向こう側には、また階段があった。

足音が聞こえ、下に下りていく夕美の背中が見えた。

「待って!」

僕も、階段を下りた。

すると、下にあったのは、小さな事務所と…三台の機械だった。

「ここは、上にあった店の売り上げを、他社に送る為の場所」

夕美の説明に、僕は三台の機械のそばに行った。

カードの差し込み口があった。

どうやら、ATMのようなものらしい。

「どうぞ」

まじまじと機械を見ていた僕に、夕美は隣にある事務所のドアを開けた。

「あっ!すいません」

慌てて、僕はドアに向かった。

「ここは、地下街の管理事務所。売り上げを管理していたから、一般人は知らない」

僕を中に入れた後に、夕美は入ると、ドアを閉めた。

「ということは、夕美さんは!ここで、働いていたんですね」

僕の言葉に、夕美は目を伏せ、

「ここで、働いていたのは…あたしの彼氏」

手をぎゅっと握り締めた。

「!」

僕は、何も言えなくなった。

「アルテミアに殺された…彼氏よ」
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