俺はお前だけの王子さま
渡瀬 愛子・side

切ない想い

「愛子ちゃん、いくよ~」


水梨くんが私に向かって
ビーチボールをトスした。


意外に大きなアーチを描いた
ボールを受け取るのに


私は海水をパシャパシャいわせながら下がる。


すると


『きゃっ!!』

っえ…?!


突然背後から小さな悲鳴。


背中で知らない人に当たってしまった。


『ちょっとぉ』


「ご、ごめんなさ…」

グイッ

謝る私の肩に手が置かれ

「ごめんね?」


そのまま肩を包むように
ふわりと腕が回された。


――え?

見上げるとすぐそこには爽やか笑顔の水梨くん。

ドキ…

思わず体に力が入った。


そんな私に
気付いてるのか気付いていないのか…


「俺が悪いんだ~ごめんね?」


肩を抱いたまま
ちょっと困ったような顔をする水梨くん。


『えっいえ…あの…大丈夫です』


水梨くんに見つめられた女の人は、頬を染めながら水梨くんをちらちら見ると去っていった。



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