俺はお前だけの王子さま
高速を走る車。

会話も自然と途切れて私たちはしばらく無言だった。


どうしよう…

胸が痛いよ…


そんな中、王子くんがぽつりと言った。


「なぁ…」


「ん?」


「俺と来る?」


「え…?」


突然の王子くんの言葉に私は少し驚いた目で王子くんを見た。


「………っ」


いつの間にか王子くんは優しい目で私を見ていた。


「渡瀬が来たいなら良いよ」


「…………」


「つ―か…俺が離したくない」


「…………」


こんなタイミングでの王子くんの優しい言葉に…


ダメだ…

泣きそう…


「…………」



泣くな…ッ


私は膝の上の手をキュッと握った。


「ありがと」


へへ…と無理やり笑いながら、唇が震えた。


「遊びに行くね…」


「………」


私の返事に王子くんは無言で小さく頷くと優しく私の頭を撫でた。






わかってる


私が着いて行ったってどうしようもない事は。


非現実的だし、今さら行けるはずもない。


だけど王子くんは私の為に言ってくれたんだ…


現実をお互い承知の上での王子くんの優しい言葉。


王子くんのそんな気持ちが聞けただけで…十分だよ。


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