俺はお前だけの王子さま
「お前あの肉どうしたの?」


ヒロキが笑ながら俺のところにやってきた。


袖を捲ってエプロンを付けているヒロキはなんだか嬉しそうだ。



「すき焼き運ぶよ~」


渡瀬の声で、
ちゃぶ台にカセットコンロとすき焼きが運ばれる。


「めっちゃ旨そう~」


勇気がはしゃいで
4人でちゃぶ台を囲んだ。


渡瀬と勇気が手を合わせたので俺とヒロキも手を合わせた。


「「頂きます。」」


勇気は満面の笑みで肉を頬張る。


「王子くんの肉ヤバい~!めっちゃうまい」


そんなに旨いかよってぐらいのリアクション。



渡瀬が箸を置いて俺を見た。


「王子くん…わざわざありがとう…気付かなくてごめんね」



どんな顔してるかは見なくても分かる。



別に渡瀬の為じゃねぇし。


俺が食いたいから買ったんだ。


「いいから食えば」


ぶっきらぼうに言った。


「…うん」


渡瀬はなぜか涙ぐんで
ぐす…と鼻を吸っていた。


そんなに…

高級肉が珍しいのか?



「渡瀬さん…どうしたの?」


ヒロキが渡瀬に言う。



渡瀬は笑顔で答えた。


「ごめん…本当に美味しくて。普段は勇気にこんな美味しいもの食べさせてあげれないから、嬉しくて…」



渡瀬は、もう一度ありがとうと俺に言った。



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