あの子のために雪は降る
二章 小さな客人
シューシューとヤカンから蒸気が出ている…。どうやらお湯が沸いたらしい。

俺は食器棚からマグカップを取り出すとココアを作ってやった。


家には誰も居ねえ。
オフクロは外に男を作って消えちまったし、親父は海外へ出張が多くて留守だった。

もっぱら盆、正月すらまともに帰って来ない親父は居ないのも同然だ。
要するに俺は一人暮らしな毎日ってわけさ。


俺はオフクロのカーディガンをガキに着せてやると、足の傷を手当てしてやった。

かすり傷だったが血がにじんでいたので、消毒と包帯を軽く巻いておいた。

喧嘩ばかりの自分は怪我の手当だけは慣れてたからな。
深くはないが範囲が広いかすり傷に、ガキはしかめっ面で目を背けた。
小さくても女の子。怪我を見るのは嫌だったんだろう。


「よし、こんなもんだろ!ちったぁ暖まったかよ?あん?」


俺はガキの前に座ると、先程落ち着いて吸えなかったタバコに火を着けた。

ガキは自分の手より大きなマグカップを、両手で持ったまま頷いた。
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