あの子のために雪は降る
白くてデカい袋もねえ。
空飛ぶソリも、真っ赤なお鼻のトナカイもねえ。
雪も降らなきゃホワイトクリスマスにもなりゃしねえ!


俺は今日ほどそんなロマンチックな事を考えた事は無かった。


いつもならクリスマスなんざ気にもせずにカップラーメン食ってる俺が、ガキ一匹のために必死こいて走り回ってる…。

ただの自己満足?

…そうかもしれねえ。でも俺の中の何かが、やらなきゃならないと叫んでやがる。
それはきっと重要な事なのさ。


俺は病院に辿り着くと、買ってきた衣装にバタバタと着替えた。
追加で買った真っ白なヒゲも当然付けた。
どっからどう見てもサンタにしか見えねえ。

窓ガラスに映った姿を見て一つ頷くと、三階のすずめの病室へ向かった。


「はぁはぁはぁ、流石にもう部屋に居るだろ…。電気が消えてるのは寝てるからに違いねえ。」


俺は出来る限り静かに病室のドアを開いた。

しかし、そこには昼間見た主が居ないベッドが一つ…。すずめの姿は無かった。


「嘘だろ…?どこだよ…すずめ…。」


俺はガランとした殺風景な部屋を見回してそうボヤいた。
< 38 / 47 >

この作品をシェア

pagetop