あの子のために雪は降る
「鳥頭は三歩歩けば忘れる」とは良く言ったもんだ。
俺は角を一つ曲がる頃には、すっかりガキの事なんざ頭から消えちまってた。

胸ポケットからタバコを取り出すと、立ち止まって火をつけた。

いや、実際は着けようとしたんだ。
でも前からの風でなかなか着かない。

俺はクルリと後ろを向いて、ようやく火を着けて顔を上げた。


その瞬間。


「おわっ!!お前何追いて来てんだ!!」


俺は思わずタバコを落としそうになった。
何故ならすっかり忘れていたガキが、ぬいぐるみを抱えたまま立っていたからだ。

ソイツは何も言わずに俺を見上げていた。
今にも泣きそうな…そんな目で。


「チッ!俺に追いて来ても楽しい事ぁ無え、サッサと帰りな!」


面倒は背負いたくねえ。
こんな訳の分からないガキを連れて歩くなんてごめんだからな。

俺はタバコを一息吸い込むと、きびすを返して歩き出した。


ザッザッザッ…トコトコトコ

ザッザッザッ…トコトコトコ


「………………。」


何だってんだ…。このガキは何故追いて来る…。
明らかに足音が多く聞こえるのは幻聴じゃ無いはずだ。

俺は再び振り返った。
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