過去の秘箱


上に…上に詩織がいるんだよ。


沙織は壁に顔を向けたまま、動けない、声も出せなかった。


と……正男が沙織の隣に入って来た。


沙織は正男を振り返り、キッと睨み付け、小さな声で言った。


「お父さんやめてよ~上に詩織がいるんだよ」


正男の臭い口から、低い微かな声が……。


「声を出すな…入れないから大丈夫だ…向こうを見ていろ……」


と、沙織の背中にへばりつき、胸を執拗に触ってきた。


もう、これ以上は声を出せない、音をたてれば詩織が…詩織が起きてしまう………。


沙織は我慢する事を選んだ。


正男はパジャマの下の中にも手を忍ばせてきた……。


沙織は歯を食いしばり、一秒一秒…時間が過ぎていくのを待った。



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