ね、先生。
私は、握り締めた携帯を先生に押し返す。

先生は私を切なそうに見つめながら、携帯に出ず、電源を切った。



私の瞳から ひと雫こぼれ落ちた涙を、


先生は 人差し指で拭い、



「帰ろう。」


そう、優しく呟いた。





帰りの車の中で、

私達は会話を交わすことも無く、

ラジオから届く、異国の曲が流れていた。





家の近くで私を降ろした先生は、


「じゃ、・・・またな。」


そう言って、車を走らせてく。




ね。

今から何処へ向かうの?

車の時計は、21時を過ぎてたよ?

アノヒトに電話するの?

アノヒトの所へ・・・行くの?
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