ただ風のように
「私には、兄達みたいな才能はないって、そう言われて……」
「そっか。自分を否定されたように感じたでしょ?」
私は頷いてこう言った。
「母にとっては私は物なんです。自分の都合の良いときに動く物なんです」
「……物、って?」
先輩は不思議そうに聞いた。
「母は私を『これ』とか、『あれ』とか、『それ』と呼びます。私のことを、名前で呼んだことはありません」
私は唇も震わせながら答えた。
「1回もないの?」
「私が、覚えてる限りでは……聞いたことが、ありません」
「つらくない?」