ちいさなたからもの
その日の夜。



いつも通り、深夜に帰宅する。



珍しく、まだ明かりが点いていた。



いつも父さんは、俺が帰ってくるころには眠ってしまう。



連日、疲れているんだろう。



父さんのことを考えると、胸が痛む。



けど、俺の方が・・・辛い。



居間へ行くと、父さんが音を小さくしたテレビを見ていた。



「ただいま」



それだけを言って、風呂場へ向かおうとしたが、父さんに呼び止められる。



「ちょっと待て、浩平」



「何?」



「・・・桜は、ずっと寂しがってるんだ。大好きなおにいちゃんがいなくて」



「・・・・・・」



母さんがいなくなる前までは、俺はよく桜の遊び相手になっていた。



けど、母さんの面影を残した桜を見ているのは、辛い。



だから、一緒に遊ぶなんて、できなかった。


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