ちいさなたからもの
結局、あの不気味な動物のぬいぐるみを買ってしまった。



あんなのでよかったのだろうか・・・



いや、別に俺がプレゼントしたわけでもないか・・・



桜が勝手に気に入っただけだ。



ただ、それだけだ。



宿舎の一室。



地味だけど、味があるところだ。



窓から見る夜景は、なかなか綺麗だった。



桜は、俺が選んだぬいぐるみをずっといじっていた。



「父さん、明日はどこに行くの?」




「明日は、麻枝岬ってところに行く」



あまり面白そうなところじゃなかった。



「何があるの?」



「花畑だ」



「なるほどね」



桜のためってことか・・・



「トイレに行ってくる」



父さんが立ち上がる。



「うん、分かった」



部屋に、桜とふたりきりになる。



・・・気まずい空気。



しばらく、俺は黙っていた。



けれど、すぐに耐えられなくなる。



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